肝硬変について
肝細胞の減少・死滅によって肝臓が硬化し、大きく機能が低下する疾患を肝硬変と呼びます。アルコールやB型・C型肝炎ウイルスや脂肪肝などが原因となる肝炎によって、肝臓内部で適切に代謝ができない状態となります。自覚症状がほとんどないまま進行し、進行すると深刻な症状が発現します。また、肝硬変が肝臓がんに進行するリスクもあります。
肝硬変について
日本人は、C型肝炎ウイルスが原因となる肝硬変が非常に多く、全体の2/3にも及びます。次いで多いのはB型肝炎ウイルスが原因によるものです。
また、アルコールの過剰摂取でアルコール性肝硬変が起こり、飲酒の習慣がない方も脂肪肝がきっかけで肝硬変が起こることもあります。
肝硬変の症状
肝硬変によって肝臓の機能が大きく低下すると、様々な症状が起こります。
かゆみ・黄疸
肝臓で代謝できなくなったビリルビンが蓄積することで、かゆみや黄疸(白目や皮膚が黄色く変色する)などの症状が起こります。
意識障害(肝性脳症)
代謝が進む中で生成されるアンモニアは、通常は肝臓の中で毒性がない物質に分解されます。しかし、この機能に異常が起こると、毒性があるアンモニアが血中に蓄積し、脳へダメージが及ぶことで、肝性脳症という意識障害につながる恐れもあります。
腹水・むくみ
肝硬変によって、肝臓の内部で起こるアルブミンというタンパク質の生成に支障をきたします。アルブミンが不足すると、血中の水分が血管の外に出やすくなります。外に出た水分によって、腹水やむくみなどが起こります。
消化管出血(食道・胃静脈瘤)
肝臓が次第に線維化して硬化すると、消化管から肝臓に流れ込む血液も肝臓に取り込まれづらくなります。肝臓に取り込まれなくなった血液は遠回りして、胃や食道の静脈を経由して心臓へ戻ります。こうした血流の状態は、胃や食道の静脈に大きな負担をかけることになり、血管が静脈瘤として太くなり、盛り上がります。静脈瘤の壁は引っ張られて薄くなっているため破裂しやすく、破裂してしまうと下血や吐血が起こる恐れがあります。
血球の減少(赤血球、白血球、血小板)
肝臓に取り込まれなくなった血液が脾臓に逆流することで、脾臓が腫れ上がり脾腫が起こります。脾臓が腫れると、赤血球、白血球、血小板が分解されることで、血球が減ります。
赤血球が減ると貧血のリスクが上がり、白血球が減ると感染症にかかりやすくなり、血小板が減ると血が止まりづらくなります。
腎障害
肝硬変によってアルブミンが不足したり、ホルモンバランスが乱れることで、腎障害に至る恐れがあります(肝腎症候群)。肝硬変の患者さんは、腎機能が低下すると命に関わることにもなりかねませんので注意が必要です。
肝臓がん
肝硬変が進行して肝臓がんになることが多いです。
肝硬変の原因によって異なりますが、年間で約5%の割合で肝臓がんになる方がいらっしゃいます。10年経過すると、3〜5割の方が肝臓がんを発症します。
肝硬変の検査
画像検査や血液検査を中心に行います。画像検査では、CT検査や超音波検査によって肝臓の形状の変化、腹水やむくみの有無を確認します。血液検査では、採血によって異常のある数値が出ていないかを確認します。
腹部超音波検査
肝硬変を診断するには、腹部超音波検査が有効かつ容易に実施できます。検査で、肝臓の縁が丸く変形していたり、表面がゴツゴツしているといった所見が確認できると、肝硬変の疑いがあります。
胃カメラ検査
肝硬変では、食道・胃静脈瘤を併発することが多いです。したがって、肝硬変の診断を受けた方は、胃カメラ検査を受けることをおすすめしております。
破裂寸前の静脈瘤を発見した際は、高度医療機関でカテーテル治療や内視鏡治療が必要になります。
肝硬変の治療
肝硬変の治療にあたっては、肝硬変の進行を防ぐことが最優先です。また、ウイルス性の肝硬変であれば、ウイルスを退治するために薬物療法を実施します。さらに、合併症も起こっている場合は、各疾患に対して適切な治療を実施します。
食道静脈瘤
内視鏡的治療、カテーテル治療、手術療法
肝性脳症
栄養療法(タンパク質の摂取制限などのサポート)、難吸収性抗菌薬、合成二糖類、BCAA製剤などのお薬の使用
肝硬変の発症を防ぐために
肝硬変の原因は複数考えられ、肝炎ウイルスも原因のひとつです。予防接種やウイルス検査を定期的に受けることが重要です。また、お酒を控え、食事では食物繊維を積極的に摂るなど、日頃の生活習慣も見直しましょう。